勝手時空雑記

思ふこと言はでぞただにやみぬべき われとひとしき人しなければ

A calm hot spring in a poetic hamlet

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上州の山あいにひっそりと佇む名湯

ここ数年、自由になる時間を見つけては電車に飛び乗り、観光地化していない地方の隠れた名所を訪ね歩く旅を続けています。若い頃の自分には想像も出来ませんでしたが、露天風呂にゆったりと浸かり、日々の喧騒を忘れる時を過ごすこともあります。

 

自宅から気軽に行ける田舎情緒豊かな土地が好きです。北関東の山あいに位置するこの湯治場はお気に入りの場所のひとつ。これと言って特徴のない古くからの温泉街なのですが、初めて訪れた時から何故か心惹かれ、年に一二度の割合で通っています。

 

著名な詩人、北原白秋が「枯野の旅」でも詠んでいるとおり、ここは草津の上がり湯。柔らかな泉質が自慢の名湯です。昼間でも街道をゆく人影は疎らで、ゆったりした時の流れを心ゆくまで堪能することが出来ます。

 

村外れの和菓子屋でしか出会えない「きび饅頭」も大のお気に入り。来訪時には必ず買って帰ります。毎朝ひとりで黙々と餅や饅頭を作り続けているご主人、今日も元気でやっているかな。あの懐かしい味、どうかいつまでも変わらずにいてください。

 

「上野の草津の湯より澤渡の湯に越ゆる路、名も寂し暮坂峠…」筑後国にほど近い火の国に生まれ、全国を旅しながら数々の詩を詠んだ白秋。そういえば子供の頃、揺籃の上で回るメリーオルゴールから流れるメロディーも、たしか「ゆりかごのうた」だった。

 

「今が一番幸せ」を座右の銘にする僕だけど、母や祖父母に囲まれ、何の憂いもなく過ごしていた幼少のころ。

 

もう遠い遠い昔のこと…。