勝手時空雑記

思ふこと言はでぞただにやみぬべき われとひとしき人しなければ

A professional service in a catsle town

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東海道の城下町で出会った水饅頭

都内在住のため、旅に出るとき先ず迷うのは、「五街道のうち、今回はどの方面に行こうか」ということ。ほぼ均等の比率で江戸の町を後にしているつもりですが、西へ向かう旅が心持ち多いような気がします。毎度JR東日本の快速列車に乗り、熱海までは一気に移動。が、その後の駿河遠江の長いこと長いこと…(苦笑)。「静岡県内にも快速列車の設定を是非」と思わずにはいられません(経営層の方々、ご検討ください)。

 

そんな長い東海道線の旅ですから、途中下車をすること多数。下りの興津、上りの島田等、普段は普通列車の始発駅で乗り換えることが多いのですが、たまに気が向いたときには見知らぬ駅に降り立ってみます。東海道五十三次のこの宿場町を訪ねたのは数年前。列車の窓越し、茶畑の奥に立つ、室町時代からの城が今回の目的地です。

 

甲州武田信玄三河徳川家康という、歴史にその名を遺す有名武将に睨まれた風光明媚な駿河国。山海の幸に恵まれ、その上、甘いみかん、良質の茶まで栽培出来る土地柄です。嘸かし緊張の連続の歴史だったろうと、天守閣から城下を眺め、想像を巡らせます。余談ながらこの城、文久元年に再建された「二ノ丸御殿」が現存。国の重要文化財に指定されているようです。

 

写真の水饅頭は、偶然出会った旧東海道沿いの老舗和菓子店で頂いたもの(通常は「水まんじゅう」と記しますが、店の表示に従い漢字表記としました)。お店の人には甚だ迷惑でしょうが、出来る限り購入した商品はその場で頂く主義です。「新鮮なうちに…」と言いたいところですが、単に卑しいだけなのかもしれません(笑)。

 

さて、店内の床几台に腰掛けひと口…。城からの道中、夏の炎天下を歩いたせいもあってか、筆舌に尽くし難い味わいです。葛粉が放つ仄かな香り、中の餡の程よい甘味、滑らかな喉越しを生む絶妙な水気…。「もう少し上品に食せばよかったな…」と(おそらく店主から)思われるほど、一気に平らげてしまいました(笑)。

 

食後我に返り、ふと盆に目を落とすと、そこには愛らしい兎が二羽。すすきの原から仲良く半月を見上げています(写真では皿に隠れて見え難いかもしれませんが、右の水饅頭が少し黄色味がかっているのは、真下に金色に輝く月が隠れているせい)。よく見れば、決して安くはない伝統細工の和盆です。

 

どこの誰かも分からない飛び込みの一見客に対し、泰然、かつ涼やかに示す丁寧な応対。

 

以下は僕の勝手な思いですが…、

 

日本有数の主街道、宿場町。古の昔から東西を行き来する多くの旅人に接し続けてきた「遺伝子が成せる所作」と思わずにはいられない、そんな暖かな、真のおもてなしの心に触れた旅でした。