勝手時空雑記

思ふこと言はでぞただにやみぬべき われとひとしき人しなければ

A mysterious shellfish on the stone pavement

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ベルギー王国の広場、石畳の粋なオーナメント

21世紀に生きる僕たちは世界中を気軽に旅することが出来ます(COVID-19により一時的に難しい状況ですが…)。でも今から400年の昔、江戸年間のおよそ250年間、「鎖国」という対外政策のため、一般民間人は日本国外に出ることを許されない時代があったことは皆さんご承知のとおりです。

 

今は海外旅行はおろか、本人の意思や希望により、海外に移住、または一時的に滞在することも許される時代です。僕の場合は会社からの命により「駐在」という形で欧州に長く住みましたが、当時は見るもの聞くものみな珍しく、分からない単語や言葉に行き当たる度、すぐさまその場で、必死に辞書のページをめくっていたことを思い出します。

 

Paris、Düsseldorfに事務所があり、会議や商談のため、国境でさえ日常的に車で容易に越える世界。言語によって都市名がかなり変化することも、このとき身をもって体験しました。特にベルギーは周囲の大国から数多の侵略を受けた「欧州の十字路」と呼ばれる地。Antwerpen、Liègeなどは蘭仏独他、計四言語による名前を有しています(ある意味、悲しい歴史の証人ですね)。

 

さて、その州や町の境界を越える度、高速道路脇の看板に描かれた大きな紋章が目に飛び込んできます。デザインや色使いにそれぞれ特徴があり、どれもみな格好良かったなあ(私見ではLionをモチーフにしたものが多い)。また、街中では人々が身に付けるアクセサリー、店先に飾られるオーナメント(装飾品)等々。どこを切り取っても「ザ・欧州」だった。

 

冒頭の写真は、ベルギー王国のとある広場の石畳に埋め込まれたオーナメントです。記録に残したのは今から十年ほど前のこと。ですから今でも同じ場所にあるかどうか分かりません。でも歴史(的なもの)を大切にする欧州のこと、きっと今でも同じ場所で、広場を行き交う人々を見上げていることでしょう。

 

実は初めて遠くからこのオーナメントを見つけたとき、きっとブローチか何か、誰かの落とし物だろうと思いました。が、拾おうと近づき、腰を折った際、あまりに滑らかな表面にちょっとした違和感を覚えます。良く見れば、表面の溝に少し土も付いています。「埋め込まれているんだ…」。そう気付くまで、さほど時間は掛かりませんでした。

 

でも、何故「貝」なのか。何故、石畳に埋め込まれているのか…。欧州史に造詣が深い方ならば、その謎をご存じかもしれません(コメントでご教授頂ければ幸甚です)。

 

いずれにせよ、ひとつ確かなことは、その昔、こんな粋なことをする人物がベルギーにいたということ。

 

物語、民謡…、心に残る作品には作者不詳ものが多いと感じるのは、果たして気のせいでしょうか。