勝手時空雑記

思ふこと言はでぞただにやみぬべき われとひとしき人しなければ

My youth swayed on the 'Yellow canoe'

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人々の様々な思いを乗せ、ゆっくり時を刻む観覧車


中学生の頃、と言っても、もう40年以上も前のことですが、キャンディーズのファンでした(唐突な話ですみません…)。年齢的には僕よりもかなりお姉さんなのですが、三人のキュートな笑顔と美しいハーモニーに惹かれたからでしょうか。そして何よりも、僕自身が男兄弟の長男として生まれ育ったこともあり、「あんな素敵なお姉さんがいたらなあ」という願望が心のどこかにあったのかもしれません。

 

そのキャンディーズ、当時のアイドルグループ(歌手)としてはかなりの人気を誇り、ヒット曲にもそれなりに恵まれたと思うのですが、不思議と記録上、オリコン一位を獲得しことは最後の最後まで無かったようです(引退直前にリリースした「微笑がえし」が初の一位)。野球で言えば「長嶋茂雄選手」がそうであるように、記録と記憶はいい意味で一致しないんですね。

 

シングルカット(懐かしい響きです…、今の若い世代には何のことかさっぱり分からないかも)されたナンバーに名曲が多いのはある種必然のことですが、B面(この言葉も懐かしい)のカップリングやアルバムの中にも実に多くの名曲があります。ヒットすべき宿命を背負わされた曲作りとは異なり、メンバーひとりひとりの個性を生かした珠玉の作品が目白押しです。

 

Sueのストレートな声質を活かした「青春の真中」「涙色の幸福」、Mikiのちょっと掠れた声が特徴的な「待ちぼうけ」「あなたのイエスタデイ」、そしてRanが甘い声で囁く「Paper Plane Love」「黄色いカヌー」等々。今ではYoutubeのお陰でアンプやプレーヤーに火を入れるまでもなく、スマフォで気軽に聴くことが出来ます。技術の進歩って、ある意味時空を簡単に飛び越える力を持っているのかもしれません。

 

さて、先に挙げた曲の中で、実は「黄色いカヌー」だけはちょっと異質の存在。一見、明るい詩に思えますが、実は別れを予感した女性の気持ちを謳ったもの。そしてRanはさらっと歌い上げていますが、女主人公は死をも厭わない様子。しかもその重い詩を短調ではなく長調の旋律に乗せるという捻り様。正直「これ本当に伊藤蘭さんが作詞作曲したの!?」と思わずにはいられない「緻密に計算し尽くされた大人の仕上がり」です(少し大袈裟ですかね…笑)。

 

趣味でバンドを組み、恥ずかしながら稚拙な作詞作曲もしていた学生時代…。

 

当時こんなインパクトのある曲が書けたらどんなに楽しかったことかと、数十年の時が過ぎた今でも、この「黄色いカヌー」を聴くたび、ふと二十歳(はたち)の頃の自分の姿を思い出します。