勝手時空雑記

思ふこと言はでぞただにやみぬべき われとひとしき人しなければ

May he rest in peace, to my dear brother

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最愛の弟と、幼き日のツーショット

たったひとりの弟が急逝しました。突然の訃報でした。知らせを受けたとき、何かの間違いかと思いました。すぐさま弟の住む街に向かい、市内のとある葬祭会館へ駆け付けました。時は既に夜。静かな館内の階段を昇り、部屋のドアを開けると、奥の畳の上に打ち覆いを掛けられて横たわる、弟の姿が目に飛び込んできました。

 

弟とは三つ違い。その昔、どうしても女の子が欲しかった母は第二子を身籠ったとき、女の子の名前しか考えていなかったと聞いています。その名前は「舞(まい)」。しかしながら、期待に反して生まれてきたのは元気な男の子。「薫(かおる)」と名付けられた弟は、幼稚園に入る年まで、まるで女の子のように育てられました。

 

女の子の名前しか考えていなかったような母です。果たして用意されていた洋服は全て女の子用。髪の毛も長く伸ばし、あろうことかリボンまで飾り付ける始末。乳母車に乗せ近所を散歩する度、決まって「あら、可愛い女の子だこと」と声を掛けられたと聞いています。冒頭の写真はその数年後、近所の空き地で撮った写真。確かに女の子みたい。

 

亡くなった翌々日に通夜を。そして、その次の日には告別式を済ませました。通夜は葬祭会館が有する郊外の施設(一軒家)を貸し切り、身内だけで静かに執り行いました。弟の奥さん、長女、長男、(僕と弟の)叔父、叔母、そして僕の計六人で。一晩かけ、故人との長い別れを心に深く刻むために。

 

さてその晩、施設で奇妙な体験をしました。通夜の会食が終わりかけた夜10時頃、不意に部屋のドアがノックされました。大きな音で二度「コンコン」と…。「はい」と返事をしましたが誰も入って来ません。不思議に思いドアを開けてみましたが、長い廊下に人影は見えません。そういえば係の人たちは全員、9時前には施設を引き払った筈…。

 

既に叔父と叔母はホテルに引き上げ、施設には弟の家族、そして僕の四人のみ。そして不思議なことに、ノックの音が聞こえたのは長男と僕の二人だけ。弟の奥さんと長女は全く気付かなかったらしい。「確かに聞こえたよな」と弟の息子に訊ねたところ、「はい」との返事。部屋を出て、施設内を見て回りましたが、やはり人の姿はどこにもありませんでした。

 

今思えば、あれは弟からのメッセージではなかったのかと…。突然この世を去らなければならなかった弟が、男二人に「後のことは頼む」と伝えたのではないだろうか。後日知り合いにこの話をしたところ、自ら似たような体験をしたり、人から聞いたりしているとのこと。超常現象を信じざるを得ない、稀有な、そして不思議な体験でした。

 

ところでこのメッセージ、弟は読んでいるだろうか。四十九日にはまだ時間があるし、きっと僕のPCの画面を、どこからか眺めていることでしょう。

 

亡き母と仲が良かった弟。いつかのブログに書いたけど、夕陽が奇麗な新潟の海によく一緒に出掛けていた。

 

今頃、その母と久しぶりの対面をしていることでしょう。そしてきっと、こう厳しく叱られてもいることでしょう。

 

「薫、何で来たの!まだここに来る歳ではないでしょう!」と…。